ごあいさつ
株式会社インターラクトが設立されたのは、1991年のことでした。
当時は満28歳。事業計画を立てることなく、ただ、ミッションステートメント(=会社が存在する使命)だけを決めて、ひた走ってきました。
ゲーム誌編集者だった私は、ゲーム産業の一層の成長と成熟を信じて疑いませんでした。ただし、何かが足りないとも感じておりました。言語が異なる者同士の「通訳」のようなコミュニケーターです。不肖、私がその役目を果たしたいと思いました。心の中の炎は燃えたぎっていました。
「ゲーム業界」と「他業種」、「文系人間」と「理科系人間」、「経営者」と「開発者」がインタラクティブな交流を持ってもらうための存在になる。これが社名の由来です。
Interact。
Interactive。
Interactivity。
今でこそ、どれも知られた英語となりましたが、創業時には難解な用語でした。しかしながら、幸運にも私の予測は当たり、当社は右肩上がりのゲーム市場とともに成長することができました。
2000年の頃です。
私は異変を感じました。一転して、ゲーム業界の成長は鈍化すると予測をしました。2000年に発行した『ゲームの時事問題』という著書の副題で「夢のようなゲームの時代は終わる」と警句を発しました。
ソフトをつくれば売れる時代は終わった。
宣伝すれば宣伝するだけ売れる時代も終わった。
漫然と社員が集まり、チームを結成すればソフトが完成する時代も終わった。
プロジェクト・マネジメント。
マーケティング。
人材育成。
この3つの領域を中心とした実践的なコンサルティング活動を行ってまいりました。
それでも、既存ゲームソフトの市場規模は逓減傾向にありました。
この問題を海外市場進出で埋めようとする提案者がいます。
あるいは、昨今はソーシャルゲームこそがゲームビジネスの本流になると予見する人もいます。
私は違います。
これからの先の10年間は、あらゆるものが「ゲーム化」していくと考えます。
そのことを、Gameficate、あるいはGameficationと呼ぶことにしました。
ゲーム産業は誕生したときから「を・にする」の道を歩んできました。
「テニスをゲームにする」「レースをゲームにする」「射撃をゲームにする」「犯人探しをゲームにする」「野球をゲームにする」「剣と魔法の戦いをゲームにする」。何かの題材を一定の手順によってゲームにする。この創造プロセスのことを私は「『を・にする』の工程」と呼びます。
未来はどうなるのか?
「『が・になる』の時代」がやってくるでしょう。「放送がゲームになる」「出版がゲームになる」「食生活がゲームになる」「節約がゲームになる」「広告がゲームになる」「住空間がゲームになる」「映画館がゲームになる」……。
プラットフォームの中に閉じ込められたものがゲームではありません。 情報・通信・技術が、爆発的な進化をするであろう2011年以降、「社会のいろいろなものがゲームになりたがっている」「日常生活がゲーム化していく」。それが私が、現在描いているビジョンです。
私と私をサポートしてくれるスタッフは、ゲーム業界以外の方たちのGameficateのお手伝いをいたします。
また、既存のゲーム会社は従来の発展形に未来はありません。
そのかわりに、大胆に発想を変えて、異質な者同士を組み合わせれば、限りない可能性を持っています。すでに、家庭用ゲームソフトとブラウザゲームや玩具など。他のモノと結びつく兆しが見えています。融合してこそ、次世代のゲームは花が咲きます。
当社は、今年で第21期を迎えます。
今まで、当社と私を信じておつきあいいただいた皆さまに、心より御礼を申しあげます。
今から10年間、人類が見たことのない変化の連続が起きるでしょう。職業人としての私は、歴史の中で生きることができて幸せです。
株式会社インターラクト
代表取締役・平林久和